ABCの友はあまり大勢ではなかった。それは芽ばえの状態にある秘密結社だった。もし親しい仲間というものが英雄になり得るとすれば、ほとんど親しい仲間と言ってもいい。彼らは巴里の二カ所で会合していた。一つは市場の近くのコラント[#「コラント」に傍点]と呼ぶ居酒屋、これは後になって問題となるものである。それからも一つは、パンテオンの近くで、サン・ミシェル広場のミューザン[#「ミューザン」に傍点]という小さな珈琲《コーヒー》店、これは今日なくなっている。第一の集会の場所は、労働者の出入りする所で、第二の方は学生の出入りする所だった。
ABCの友のふだんの秘密会は、ミューザン珈琲《コーヒー》店の奥室で催された。その広間は店からかなり離れていて、ごく長い廊下で店に通じ、窓が二つあり、グレー小路に面して秘密な梯子《はしご》がついてる出口が一つあった。人々はそこで煙草《たばこ》をふかし、酒を飲み、カルタ遊びをし、または笑い声をあげていた。ごく高い声であらゆることを語っていたが、あることは低い声で話し合っていた。壁には共和時代のフランスの古びた地図がかけられていたが、それだけでも警官の目を光らせるには十
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