ツいて開いた窓のそばで本を読んでいた。各種の夢想が空間から浮かんできて、彼の考えに混入した。何という大なる光景で夜はあるか! どこから来るとも知れぬほのかな響きが聞こえる。地球より二百倍も大きい火星が炬火《たいまつ》のようにまっかに輝いているのが見える。大空は黒く、星辰はひらめいている。驚くべき光景である。
マリユスは大陸軍の報告書を、戦場において書かれたホメロス的な文句をその時読んでいた。間をおいては父の名前が出てき、絶えず皇帝の名前が出てきた。大帝国の全局が現われてきた。彼は自分のうちに、潮のようなものがふくれ上がりわき上がってくるのを感じた。時とすると、息吹《いぶき》のように父が自分のそばを通って、耳に何かささやくかと思われた。彼はしだいに異常な気持ちになっていった。太鼓の音、大砲のとどろき、ラッパの響き、歩兵隊の歩調を取った足音、騎兵の茫漠《ぼうばく》たる遠い疾駆の音、などが聞こえてくるかと思われた。時々彼は目を天の方へ上げて、きわまりなき深みのうちに巨大な星座の輝くのをながめ、それからまた書物の上に目を落として、そこにまた他の巨大なるものが雑然と動くのを見た。彼の胸はしめつ
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