B
その医者と牧師と女とは、一言も発せず、痛心のうちにマリユスをながめた。彼はその間にあってひとり門外漢だった。マリユスはほとんど心を動かしていなかった、そして自分の態度をきまり悪く感じ、また当惑した。彼は手に帽子を持っていたが、悲しみのためそれを手に保つ力もなくなったと見せかけるため、わざと下に取り落とした。
と同時に彼は一種の後悔の念を感じ、自らその行ないを卑しんだ。しかしそれは彼が悪いのだったろうか。いかんせん、彼は父を愛していなかったではないか!
大佐の遺産とては何もなかった。家具を売り払っても葬式の費用に足るか足らずであった。下女は一片の紙を見つけて、それをマリユスに渡した。それには大佐の手で次のことが認めてあった。
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予が子のために[#「予が子のために」に傍点]――皇帝はワーテルローの戦場にて予を男爵に叙しぬ。復古政府は血をもって贖《あがな》いたるこの爵位を予に否認すれども、予が子はこれを取りこれを用うべし。もとより予が子はそれに価するなるべし。
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その裏に大佐はまた書き添えていた。
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なおこ
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