ういう言葉を吐きかけた。
「焼けた、焦げた、煮えた、蒲焼《かばやき》だ!」
そして彼は恐ろしい勢いでまた歩き出した。
「ああ、」と彼は叫んだ、「とうとう見つけたよ、慈善家さん、ぼろ着物の分限者さん、人形をくれた奴《やっこ》さん、老耄《おいぼれ》のジョクリスさん!([#ここから割り注]訳者注 ジョクリスとはお人よしの典型的人物[#ここで割り注終わり])ああお前さんにはわしがわからないのかね。ちょうど八年前、一八二三年のクリスマスの晩に、モンフェルメイュのわしの宿屋へきたなあ、お前さんではなかったろうよ。ファンティーヌの娘のアルーエットというのをわしの家から連れ出したなあ、お前さんではなかったろうよ。黄色い外套《がいとう》を着ていたのはな、そして今朝《けさ》わしの所へきた時のようにぼろ着物の包みを手に下げていたのはな。おい女房、よその家へ毛糸の靴下《くつした》をつめ込んだ包みを持って行くのは、この男の癖と見えるな、この慈善顔をした老耄めのな。分限者さん、お前さんは小間物屋かね。貧乏人に店のがらくたをくれやがって、へん、笑わせやがるよ。お前さんに俺《おれ》がわからねえって? だがな、俺の方ではわかってるんだ。お前がここに鼻をつっ込みやがった時からすぐに見て取ったんだ。宿屋だからと言ってやたらに人の家へ入り込みやがって、みじめな着物をつけてさ、一文の銭をこうような貧乏な様子をしてさ、人をだまかし、大きなふうをして、米櫃《こめびつ》をまき上げやがって、森の中で人を脅かしやがって、そのくせ人が落ちぶれてると、大きすぎる外套《がいとう》だの病院にあるようなぼろ毛布を二枚持ってきて、すました顔をしてやがる。それでうまくゆくと思うと大まちがえだ、老耄《おいぼれ》の乞食《こじき》めが、誘拐者《かどわかし》めが!」
彼はふと言いやめて、ちょっと心の中で独語してるように見えた。ちょうど彼の憤怒は、ローヌ川のように穴の中へでも落ちたかのように見えた。そしてひそかに独語したことに大声で結末をつけるかのように、テーブルを拳《こぶし》でたたいて叫んだ。
「しかもお人よしのようなふうをしやがってさ。」
そしてルブラン氏の方へ言いかけた。
「おい、お前は以前によくも俺《おれ》をばかにしやがったな。俺の不運のもとはみんなお前だぞ。わずか千五百フランで大事な娘を取ってゆきやがったからだ。娘はな、たし
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