言った、「みな何か食ったか。」
「ああ、」と母親は言った、「大きい馬鈴薯《じゃがいも》を三つと塩を少し。ちょうど火があるから焼いたんだよ。」
「よし、」とジョンドレットは言った、「明日《あす》はごちそうを食いに連れてってやる。家鴨《あひる》の料理とそれからいろいろなものがついてさ、まるでシャール十世の御殿の晩餐《ばんさん》のようにな。すっかりよくなるんだ。」
それから声を低めて彼はつけ加えた。
「鼠罠《ねずみわな》の口はあいてるし、猫《ねこ》どもももうきている。」
そしてなおいっそう声を低めてまた言った。
「それを火の中に入れて置け。」
マリユスは火箸《ひばし》かまたは何か鉄器で炭をかき回す音を聞いた。ジョンドレットは続けて言った。
「音のしねえように扉《とびら》の肱金《ひじがね》には蝋《ろう》を引いて置いたか。」
「ああ。」と母親は答えた。
「今何時だ。」
「もうすぐに六時だろう。サン・メダールでさっき半《はん》が打ったんだから。」
「よし。」とジョンドレットは言った。「娘どもは見張りをしなくちゃいけねえ。おい、ふたりともこっちへきてよく聞きな。」
しばらく何かささやく声がした。
ジョンドレットはまた高い声をあげた。
「ビュルゴン婆さんは出て行ったか。」
「ああ。」と母親は言った。
「隣にもだれもいねえんだな。」
「一日留守だったよ、それに今は食事の時分じゃないか。」
「確かだね。」
「確かだよ。」
「まあとにかく、」とジョンドレットは言った、「いるかどうか見に行ったってさしつかえねえ。おい娘、蝋燭《ろうそく》を持って見てきな。」
マリユスは四つばいになって、こっそり寝台の下にはいり込んだ。
彼が隠れ終わるか終わらないうちに、すぐ扉《とびら》のすき間から光が見えた。
「お父さん、」という声がした、「出かけてるよ。」
それは姉娘の声だった。
「中にはいったのか。」と父親が尋ねた。
「いいえ、」と娘は答えた、「でも鍵《かぎ》が扉についてるから、きっと出かけたんだよ。」
父親は叫んだ。
「でもまあはいってみろ。」
扉が開いた。マリユスはジョンドレットの姉娘が手に蝋燭を持ってはいって来るのを見た。その様子は朝と少しも変わっていなかったが、ただ蝋燭の光で見るといっそう恐ろしく見えた。
彼女は寝台の方へまっすぐに進んできた。マリユスはその間言葉にもつくし
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