壁やオーアンの凹路《おうろ》やグルーシーの遅延やブリューヘルの到来などに対してその抗弁をなげつけ、墳墓のうちにあってあざわらい、あたかも人々の倒れたらん後にもなおつっ立ち、欧州列強同盟を二音のうちに溺《おぼ》らし、既にシーザーらに知られていたその厠《かわや》を諸国王にささげ([#ここから割り注]訳者注 糞ッ! の一語参考[#ここで割り注終わり])、フランスの光輝をそこに交じえながら最低の一語を最上の一語となし、肉食日火曜日をもって傲然《ごうぜん》とワーテルローの幕を閉じ、レオニダスに補うにラブレー([#ここから割り注]訳者注 十六世紀フランスの物語作者にして辛辣なる皮肉諷刺に秀ず[#ここで割り注終わり])をもってし、ほとんど口にし難い極端なる一言のうちにその勝利を約言し、陣地を失ってしかも歴史をかち得、その殺戮《さつりく》の後になお敵をあざわらうべきものたらしむる、それは実に広大なることではないか。
それは雷電に加えたる侮辱である。それはアイスキロスの壮大さにまで達する。
カンブロンヌの一語はある破裂を感じさせる。それは軽侮のための胸の破裂であり、充満せる苦悶《くもん》の爆発である
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