なものを立証することは禁制である。
 しかし吾人《ごじん》は、危険と災禍を顧みずして、その禁制をも犯したいのである。
 ゆえにあえて吾人《ごじん》は言う。それらの巨人らのうちに、なお一人のタイタン族が、カンブロンヌがいたのである。
 あの言葉を発して、次に死する! それ以上に偉大なることがあろうか。なぜならば、死を欲することはすなわち実際に死することである、そして、砲撃されながらもなお彼は生き残ったとはいえ、それは彼の罪ではないのである。([#ここから割り注]訳者注 実際は彼はなお戦死せずして捕虜になった[#ここで割り注終わり])
 ワーテルローの戦いに勝利を得た者は、敗北したナポレオンでもなく、四時に退却し五時に絶望に陥ったウェリントンでもなく、自ら戦闘に加わらなかったブリューヘルでもない。ワーテルローの戦いに勝利を得た者は、彼カンブロンヌである。
 おのれを殺さんとする雷電をかくのごとき言葉で打ちひしぐことは、すなわち勝利を得ることである。
 破滅に向かってその答えをなし、運命に向かってその言を発し、後にできる獅子《しし》像に対してそういう基礎を与え、前夜の雨やウーゴモンの陰険な城
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