霰弾の連発の跡が刻まれてるのが見られる。プロシア軍はジュナップに突入した。かくもすみやかに勝利を得たことに彼らは憤激していたに違いない。追撃は猛烈であった。ブリューヘルは敵を殲滅《せんめつ》するように命じた。ロゲーは、フランスの全|擲弾兵《てきだんへい》を死をもって威嚇して、各自に一人のプロシア兵の捕虜をつれきたらしめんとする、痛むべき実例を残していた。しかし今やブリューヘルはロゲーにもまさって残虐であった。年少近衛兵の将軍デュエームは、ジュナップのある宿屋の門口に追いつめられ、死の部下ともいうベき一軽騎兵に剣を差し出すと、軽騎兵はその剣を取ってその捕虜を刺した。戦勝は敗北者を虐殺することによって完成された。しかし吾人《ごじん》は歴史なるがゆえに、吾人をして処罰的に言わしむれば、老ブリューヘルは自らおのれの名を汚した。かくてその残虐は災害をなお大ならしめた。絶望的の壊走《かいそう》は、ジュナップを過ぎ、レ・カトル・ブラを過ぎ、ゴスリーを過ぎ、フラーヌを過ぎ、シャールロアを過ぎ、テュアンを過ぎ、そして国境に至ってようやく止まった。悲しいかな、いかなる者がそのように逃亡したのであるか? そ
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