た、銃剣の遠い一線が、フリシュモンの方に当たって高地の上にひらめき出した。
ここにおいて、この巨大なる活劇に変転が起こった。
十一 ナポレオンに不運にしてブューローに幸運なる案内者
ナポレオンの痛ましい誤算は世の知るところである。いたずらに待ちあぐまれたグルーシーと、不意に現われきたったブリューヘル。生命《いのち》にあらで死がやってきたのである。
運命はかくのごとく流転する。世界の帝王の王座が待たれていたのに、セント・ヘレナが見えてきた。
ブリューヘルの副官ブューローの案内人となっていた牧者の少年が、森林から進出するのにプランスノアの下手《しもて》からよりもフリシュモンの上手《かみて》からすることを、もし彼に勧めていたならば、十九世紀の形勢はおそらく現今と異なっていたであろう。ナポレオンはワーテルローの戦いに勝ったであろう。プランスノアの下手《しもて》以外の道によって進んだならば、プロシア軍は到底砲兵を通すことのできない谷間に出て、ブューローは到着し得なかったであろう。
もし一時間も遅延していたなら、プロシアのムッフリング将軍も言ったごとく、ブリューヘルはもはや
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