亡兵のみであった事は、今に生きてる実見者らの語るところである。その恐慌は非常なものであって、マリーヌにいたコンデ大侯とガンにいたルイ十八世とにまでもおよんだ。モン・サン・ジャンの農家のうちに建てられた野戦病院の背後に梯隊《ていたい》をなしていたわずかな予備隊と、左翼を防いでいたヴィヴァイアンとヴァンドルールとの二個旅団を除くのほか、ウェリントンはもはや騎兵を有しなかった。多くの砲門は破壊されて横たわっていた。それらの事実はシーボンによって告白されたところである。プリングルはその災滅を誇張して、イギリス・オランダの軍隊は三万四千になされたとまで言っている。鉄石大公ウェリントンはそれでもなお自若としていた、しかしその脣《くちびる》は青ざめていた。イギリスの参謀部に従って観戦していたオーストリアの軍事監ヴィンチェントとスペインの軍事監アラヴァとは、大公の敗北と思っていた。五時に、ウェリントンは時計を出してみた、そして次の憂鬱《ゆううつ》な言葉がつぶやかれるのが聞かれた、「ブリューヘルが来るか[#「ブリューヘルが来るか」に傍点]、夜が来るか[#「夜が来るか」に傍点]!」
ちょうどその頃であっ
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