けれども、イギリス軍の方がいっそう悩んでいた。鉄の鎧《よろい》と鋼鉄の胸当てとをつけたその偉大な騎兵隊の狂猛な圧力は、歩兵を押しつぶした。軍旗のまわりに立っている数人の兵が、一個連隊の位置を示してるものもあった。そういう一隊はもはや大尉あるいは中尉によって指揮されてるのみだった。ラ・エー・サントにおいて既に痛手を被ってるアルテンの師団は、ほとんど全滅していた。ヴァン・クルーツェ旅団の勇敢なベルギー兵は、ニヴェルの道に沿った麦畑のうちに莫大《ばくだい》な死屍《しかばね》を横たえていた。一八一一年にはスペインにおいてフランス軍に交じってウェリントンと戦い、今一八一五年にはイギリス軍と結んでナポレオンと戦っていたオランダの擲弾兵《てきだんへい》らは、ほとんど生き残ったものがなかった。将校の損失はなおいちじるしかった。翌日自分の片脚を葬ったアクスブリッヂ卿は、もう膝を砕かれていた。その胸甲騎兵の戦闘においてフランス軍の方では、ドロール、レリティエ、コルベール、ドノプ、トラヴェール、およびブランカールらが戦闘力を失っていたのに対し、イギリス軍の方では、アルテンは負傷し、バーンは負傷し、デランシ
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