しながらルネブールグ隊の軍旗を奪ったのは、かかる難関に遭遇したデュボアの旅団であった。
 ナポレオンは、ミローの胸甲騎兵をしてその襲撃を行なわしめる前に、その土地をよく観測した。しかし凹路を認めることができなかった。それは高地の表面に一筋のしわをも見せていなかったのである。けれども、ニヴェルの街道との交差角を示している小さな白い礼拝堂から気づいて注意を呼び起こされ、彼は案内人のラコストに、おそらく障害物の有無についてであったろうが、何か聞きただした。案内人は否と答えたのである。一人の百姓の頭の一振りからナポレオンの破滅は生じきたったとも言い得るであろう。
 その他の災いがなお続いて起こりきたることになった。
 しかしナポレオンはその戦いに勝利を得ることが可能であったろうか? 吾人《ごじん》は否と答える。何ゆえに? 敵がウェリントンであったがためか、またはブリューヘルであったがためか? いや。それは実に神の意《こころ》であったからである。
 ボナパルトがワーテルローの勝利者となる、それはもはや十九世紀の原則に合っていなかった。ナポレオンがもはや地位を占めることのできぬ他の多くの事実が生じ
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