言った。
 その一言でフォーシュルヴァンはすっかり現実に呼び戻された。事情は切迫していた。二人の者は我に返ってからも、なぜともわからず心が乱れていた。そして彼らのうちには、その陰惨な場所のためにある言い知れぬ感情が起こっていた。
「早くここを出ましょう。」とフォーシュルヴァンは叫んだ。
 彼はポケットの中をさぐって、用意していた壜《びん》を取り出した。
「だがまあ一口おやりなさい。」と彼は言った。
 外気に次いでその壜《びん》がすべてをよくなした。ジャン・ヴァルジャンは火酒を一口のんで、すっかり元気になった。
 彼は棺から出た。そしてフォーシュルヴァンに手伝って再びその蓋《ふた》を打ちつけた。
 二、三分後には、二人とも墓穴の外に出ていた。
 それにまたフォーシュルヴァンも落ち着いていた。彼はゆっくり構えた。墓地はしまっている。墓掘り人グリビエが来る気づかいはない。その「新参者」は家にいて札をさがし回ってる。そして札はフォーシュルヴァンのポケットの中にあるから、家で見つかるわけはない。札がなければ墓地の中に戻って来ることはできないのだ。
 フォーシュルヴァンは※[#「金+産の旧字体」、
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