去ってゆくのだな。」と彼は考えた。「もう自分一人だ。」
するとたちまち頭の上に、雷が落ちたかと思われるような音が聞こえた。
それは一すくいの土が棺の上に落ちた音だった。
次にまた一すくいの土が落ちてきた。
彼が息をしていた穴の一つは、そのためにふさがってしまった。
第三の士が落ちてきた。
次に第四の土が。
いかに強い男にとっても、それはあまりにもひどすぎた。ジャン・ヴァルジャンは気を失った。
七 札をなくすなという言葉の起原
ジャン・ヴァルジャンがはいっていた棺の上の方では次のようなことが起こったのである。
棺車が立ち去った時、そして牧師と歌唱の子供とがまた馬車に乗って帰って行った時、墓掘り人から目を離さなかったフォーシュルヴァンは、墓掘り人が身をかがめて、うずたかい土の中にまっすぐにつきさしてある※[#「金+産の旧字体」、第3水準1−93−37]《くわ》を手に取るのを見た。
その時フォーシュルヴァンは最後の決心をした。
彼は墓穴と墓掘り人との間につっ立ち、両腕を組んで、そして言った。
「金は私《わし》が払う。」
墓掘り人は驚いて彼をながめ、そして
前へ
次へ
全571ページ中535ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング