「飲みにゆこうじゃないか。」と彼は言った。
 ここに一言注意しておく必要がある。フォーシュルヴァンは気が気ではなかったが、とにかく酒を飲もうと言い出したのである。しかしだれが金を払うかという一点については、はっきりさしてはいなかった。いつもはフォーシュルヴァンが言い出して、メティエンヌ爺《じい》さんが金を払った。一杯やろうという提議は、新しい墓掘り人がきたという新たな事情から自然に出て来ることで、当然のことではあったが、しかし老庭番は、下心《したごころ》なしにでもなかったが、いわゆるラブレーの十五分間([#ここから割り注]訳者注 飲食の払いをしなければならない不愉快な時[#ここで割り注終わり])をあいまいにしておいた。ひどく心配はしていたが、進んで金を払おうという気にはなっていなかった。
 墓掘り人は優者らしい微笑を浮かべながら言い進んだ。
「食わなければならないからね。それで俺はメティエンヌ爺さんのあとを引き受けたのさ。まあ一通り学問をすれば、もう哲学者だ。手の働きをしてる上に俺は頭の働きをもしてるんだ。セーヴル街の市場に代書人の店を持っている。君はパラプリュイの市場を知ってるか
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