は何でもないことだった。ジャン・ヴァルジャンは最も危険な瀬戸ぎわをも幾度か通ってきたのである。だれでも監獄にはいったことのある者は、脱走の場所の広狭に応じて身を縮めるの術を知っている。病人が生きるか死ぬかの危機にとらわれてるように、囚人も逃走の念にとらわれている。脱走は回復である。回復せんがためには人は何事をも辞せない。行李《こうり》のような四角なものの中に釘づけにされて運び出され、長い間箱の中に生きており、空気もない所に空気を見い出し、幾時間もの間呼吸を倹約し、死なないくらいに息をつめる、そんなことはジャン・ヴァルジャンの恐ろしい能力の一つだった。
そのうえ、棺の中に生きた人間を入れること、囚徒のやるようなその手段は、また皇帝の手段だった。アウスティン・カスティーレホーという牧師の書いたものによれば、それはカール大帝の用いた方法だった。彼は退位の後、最後に、も一度プロンベスという婦人に会わんために、棺の中に彼女を入れて、自分のはいってるユステの修道院を出入さしたということである。
フォーシュルヴァンは少し心を落ち着けて叫んだ。
「それでも、どうして息ができましょう。」
「息はでき
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