、院長は大念珠を爪繰《つまぐ》るのをやめて、そして言った。
「今から晩までのうちに、丈夫な鉄の棒を一本手にいれることができるでしょうか。」
「なにになさるのでございますか。」
「物を持ち上げるためです。」
「承知いたしました、長老様。」とフォーシュルヴァンは答えた。
 院長はその他には一言も言わずに、立ち上がって、隣の室にはいって行った。そこは集会の室《へや》で、たぶん声の母たちが集まっていたのであろう。フォーシュルヴァンは一人取り残された。

     三 イノサント長老

 約十五分ばかり過ぎた。修道院長は戻ってきて、椅子《いす》にまた腰掛けた。
 二人とも何かに頭を満たされてるようだった。今ここに、二人の間にかわされた対話をできる限りそのまま速記してみよう。
「フォーヴァン爺《じい》さん。」
「長老様。」
「お前は礼拝堂を知っていますね。」
「礼拝堂に私は、弥撒《ミサ》や祭式を聞きます自分の小さな席を持っております。」
「それから用のために歌唱の間《ま》へはいったこともありますね。」
「二、三度ございます。」
「あそこの石を一枚上げるのです。」
「あの重い石でございますか。」

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