上にはねかえって、ナポレオンの所までも達した。ブリエンヌの時と同じく、彼の頭上には弾丸やビスカイヤン銃弾が鳴り響いた。彼の馬の足が立っていたほとんど同じ場所から、その後、腐食した砲弾や古い剣の刃や錆《さ》びついて形を失った銃弾などが拾い出された、錆びくれもの[#「錆びくれもの」に傍点]が。数年前のことだが、まだ火薬のはいったままの六十|斤《きん》破裂弾がそこから掘り出された。ただその信管は弾丸と平面にこわれていた。この最後の佇立所において、一人の軽騎兵の鞍《くら》にゆわいつけられ、霰弾《さんだん》の連発ごとに後ろを向いてその背後に身を隠そうとしている、驚怖し敵意をいだいてる田舎者《いなかもの》の案内者ラコストに向かって、皇帝は言った、「ばかめ[#「ばかめ」に傍点]! 恥辱だぞ[#「恥辱だぞ」に傍点]、背中を打たれて死ぬつもりか[#「背中を打たれて死ぬつもりか」に傍点]。」今これらのことを物語っている著者自らも、その丘の柔かい斜面の砂を掘りながら、四十六年間の酸化のためにぼろぼろになった破裂弾の口金の残りと、彼の指の中にすいかずらの茎のように握りつぶされた古い鉄片の残りとを、見いだしたの
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