りっぱな人であった。ただ、ジャン・ヴァルジャンの口からもれた数語によって、庭番は次のことが推察できるように思った。すなわち、マドレーヌ氏はおそらくこの困難な時勢のために破産に陥ったのであろう、そして債権者どもから追い回されてるのであろう、あるいはまた、何か政治上の事件に関係して、身を隠そうとしてるのかも知れない。そしてこの考えはフォーシュルヴァンの気に入った。彼は北方の多くの農民と同じく、古くからのボナパルト派だったからである。身を隠そうとして、マドレーヌ氏はこの修道院を避難所と定めたのであろう、そして彼がここにとどまりたいというのは当然なことである。けれども、フォーシュルヴァンが絶えず思い出して頭を悩ました不可解なことは、マドレーヌ氏が庭の中にいたこと、しかも子供といっしょにいたことであった。フォーシュルヴァンは二人を目で見、二人を手でさわり、二人に話しかけたのだが、それでもなお夢のような気がしていた。その不可解事は、今や彼の小屋の中まではいり込んできた。彼は種々想像をめぐらしてみた。そしてただ「マドレーヌ氏は自分の生命の親である」ということきり何もはっきりしたことはわからなかった。
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