様はいらっしゃらなかった」に傍点]。」
 いつも鍵《かぎ》の束を持って廊下を歩き回ってる肥った受付の女が一人いた。アガト修道女という名前であった。十歳から上の大姉さま[#「大姉さま」に傍点]たちは、彼女のことをアガトクレス([#ここから割り注]訳者注 シラキューズの暴君[#ここで割り注終わり])と呼んでいた。
 食堂は長方形の大きな室で、迫持※[#「宛+りっとう」、第4水準2−3−26]形《せりもちくりがた》のついた庭と同じ高さの大歩廊から明りがはいるのみで、薄暗くじめじめしていて、子供らが言ってるとおりに、虫がいっぱいいた。周囲から虫が集まってきていた。それで寄宿生らの間では、そのすみずみに特別なおもしろい名前をつけていた。蜘蛛《くも》の隅《すみ》、青虫の隅、草鞋虫《わらじむし》の隅、蟋蟀《こおろぎ》の隅などがあった。蟋蟀の隅は料理場のそばで、ごくとうとばれていた。他の隅《すみ》ほどそこは寒くなかった。それらの名前は食堂から寄宿舎の方まで持ってこられて、昔のマザランの四国民大学のように、それで区別されていた。各生徒は食事の時にすわる食堂のすみずみに従って、四国民の何れか一つに属してい
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