うろう》とした深さが黒服の女の姿を包んでいる。目はその朦朧とした中をさがし求めて、出現した女のまわりにあるものを見きわめようとする。すると間もなく、実は何も見ていなかったことに気づくのであった。見ていたものは、夜であり、空虚であり、暗黒であり、墓地の空気に交じった冬の靄《もや》であり、恐るべき一種の平安さであり、何ものをも呼吸《いき》の音《ね》をさえも聞き得ない静謐《せいひつ》であり、何物をも幻の姿をさえも見得ない暗黒であった。
見ていたところのものは、修道院の内部だったのである。
それは実に、常住礼拝[#「常住礼拝」に傍点]のベルナール派修道女の修道院と言われる陰惨厳格なる家の内部だったのである。今いるその室《へや》は、応接室だった。先刻初めに話しかけてくれたあの声は、受付の女の声だった。彼女は壁の向こうに、四角な穴のそばに、二重の面をかぶったように鉄の格子《こうし》とたくさんの穴のあるブリキ板とにへだてられて、黙って身動きもしないでいつもすわってるのだった。
表の方に窓が一つあって、修道院の内部の方には窓がなかったので、格子のついたその室は薄暗い後ろ明りだった。その聖《きよ》
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