げて扉《とびら》を開き、中にはいると、まだ格子戸《こうしど》がおろされず大ランプがともされてない劇場の箱桟敷《はこさじき》にはいったのと同じ印象を受けるのだった。それは実際一種の劇場の桟敷で、ガラス戸から弱い明るみがほのかにさしており、二つの古椅子《ふるいす》と編み目の解けた一枚の蓆《こも》とが狭い中に置いてあり、肱《ひじ》の高さの前の口には黒木の板がついていた。そしてまた格子もあったが、ただそれだけはオペラ座のように金ぴかの木の格子ではなく、握り拳《こぶし》のような漆喰《しっくい》で壁に止めてある恐ろしい鉄格子だった。
 ややあって、その窖《あなぐら》のような薄明りに目がなれてきて、格子の向こうを透かして見ようとしても、五、六寸より先は見えなかった。五、六寸先に、茶っぽい黄色に塗られた横木で固められてる黒い板戸の垣《かき》があった。薄い長片をなしてるそれらの板戸はきっかり合わさっていて、格子の幅だけを全部おおい隠していた。それはいつも立て切ってあった。
 しばらくすると、その板戸の後ろから呼びかけてくる声が聞こえる。
「私はここにおります。何の御用でございますか。」
 それはかわいい
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