った。何だか物体の出入を許さないような趣があった。しかし目ならば、すなわち精神ならば、自由に出入を許すらしかった。また恐らくそういうつもりでこしらえられたのであろう。鉄格子の少し先にブリキ板が壁にはめ込んであって、泡匙の穴よりもっと小さな穴が無数にあけられていた。そのブリキ板の下の方には、郵便箱の口にそっくりの穴が開いていた。呼び鈴のついた平ひもが、鉄格子口の右の方に下がっていた。
そのひもを動かすと、鈴が鳴って、びっくりするほどすぐそばに人の声がする。
「どなたですか?」とその声は尋ねる。
それは静かな女の声で、あまり静かなので悲しげに響くほどだった。
そこでなお、魔法的な合い言葉を一つ知っていなければならなかった。もしそれを知らないと、声は黙ってしまって、壁の向こうには墓場のすごい暗黒がたたえてるかと思われるほどひっそりしてしまうのである。
もしその合い言葉を知っていると、向こうの声が答える。
「右の方へおはいりなさい。」
窓と向い合って右手の方に、ガラスのはまった天窓がついてる灰色塗りのガラス戸があった。※[#「金+饌のつくり」、第4水準2−91−37]《かきがね》をあ
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