した。幾つも戸口はあったが、どれもしまっていた。一階の窓にはみな格子《こうし》がついていた。
 建物の内側の曲がり角《かど》を通り過ぎると、アーチ形の窓が幾つもある所に出た。光がさしていた。彼は爪先《つまさき》で伸び上がって、一つの窓からのぞいてみた。それらの窓はみなかなり広い一つの広間についていて、広間の中は大きな石が舗《し》いてあり、迫持揃《せりもちぞろい》と柱とで仕切られ、ただ一つの小さな光と大きな影とのほか、何も見分けられなかった。その光は、片すみにともされてる一つの有明《ありあけ》から来るのだった。広間の中はひっそりとして、何も動くものはなかった。けれどもじっと見ていると、床石の上に、喪布におおわれた人間の形らしいものが、ぼんやり見えるようだった。それはうつ向きになって、床石に顔をつけ、腕を十字に組み、死んだようにじっとして動かなかった。床の上に引きずっている蛇《へび》のようなもので、そのすごい形のものには首に繩《なわ》がついてるようにも思われた。
 広間のうちは薄ら明りに浮かび上がってくる一種の靄《もや》が立ちこめて、いっそう恐ろしい趣になっていた。
 ジャン・ヴァルジャン
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