まっすぐに通じていた。庭の半ばは雑草が生《お》い茂り、残りは青い苔《こけ》におおわれていた。
 ジャン・ヴァルジャンのそばには、彼が屋根を伝っておりてきた小屋があり、薪《まき》がつみ重ねてあり、その後ろに壁にくっついて石の立像が一つあった。石像の欠け損じた顔は変な形の仮面のようになって、暗やみのうちにぼんやり見えていた。
 小屋はもう荒廃してしまっていて、壁の落ちた幾つかの室《へや》が認められ、その一つはいっぱい物がつまっていて物置きに使われてるらしかった。
 ピクプュス小路の方まで折れ曲がっているドロア・ムュール街の大きな建物は、直角をなした二つの正面で庭を囲んでいた。その内側の正面は、外部の正面よりいっそう陰気であった。窓には鉄格子《てつこうし》がはまっていて、燈火の影さえさしてはいなかった。上方の窓には監獄に見るように目隠しがついていた。その一方の正面の影は他の正面の上に落ち、更に庭に落ちて、広い黒布をひろげたようなありさまをしていた。
 そのほかには一軒の家も見当たらなかった。庭の奥は靄《もや》と夜とのうちに見えなくなっていた。けれども二、三の壁がぼんやり見分けられて、その交錯
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