婆さんが行ってしまった時、彼は引き出しの中に入れていた百フランの貨幣を包み、それをポケットに入れた。そうするのにも金の音が他に聞こえないようにとよほど注意はしたが、五フランの銀貨が一つ手からすべり落ちて、床の上に大きな音を立ててころがった。
 夕靄《ゆうもや》のおりる頃、彼はおりていって、大通りを注意深くあちこち見回した。だれも見えなかった。街路には全く人影が絶えてるように思われた。もっとも並み木の後ろに隠れようとすれば隠れることはできたのである。
 彼はまた上っていった。
「おいで。」と彼はコゼットに言った。
 彼はコゼットの手を取り、そして二人は出て行った。
[#改ページ]

   第五編 暗がりの追跡に無言の一組



     一 計略の稲妻形

 読者がこれから読まんとするページのために、またずっと後になって読者が出会うページのために、ここにある注意をしておく必要がある。
 本書の著者が、心ならずも自分のことをここに言えば、パリーを離れていることすでに数年におよんでいる([#ここから割り注]訳者注 ユーゴーが国外に亡命してることを言う[#ここで割り注終わり])。そして著者が去
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