日の戦いには、正午から四時までまったく朦朧《もうろう》たる中間があった。戦いの中心はほとんど不明で、混戦の雲霧につつまれていた。薄暮の色さえそれに加わった。うち見やれば、その靄《もや》の中には広漠《こうばく》たるうねりがあり、眩《まばゆ》きばかりの幻影があり、今日ほとんど知られない当時の軍需品があって、炎のような真紅《しんく》の毛帽、揺らめいている提嚢《ていのう》、十字の負い皮、擲弾用《てきだんよう》の弾薬盒《だんやくごう》、驃騎兵《ひょうきへい》の外套、多くのひだのある赤い長靴、綯総《ないふさ》で飾った重々しい軍帽、緋色《ひいろ》のイギリス歩兵と黒ずんだブルンスウィックの歩兵との混合、肩章の代わりに輪をなした白い大きなモールを上膊《じょうはく》につけてるイギリス兵、銅の帯金と赤い飾毛とのついた長めの皮の兜《かぶと》をかぶってるハンノーヴルの軽騎兵、膝を露《あら》わにし弁慶|縞《じま》の外套を着てるスコットランド兵、フランス擲弾兵の大きな白いゲートル、それは実に戦術的戦線ではなくて、画幅中の光景であり、サルヴァトール・ローザの喜ぶところのものであって、グリボーヴァルの求むるところのもの
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