をしていた。一羽のりっぱな小鳥が、たぶん恋をしているのであろう、大きな木の中で夢中にさえずっていた。
 門の左側の支柱の下の方の石に、冠頂石《かなめいし》の穴のようなかなり大きい丸い穴があったので、旅人は身をかがめてそれをながめてみた。その時|扉《とびら》が開いて一人の百姓女が出てきた。
 彼女は旅人を見、また彼がながめているものを認めた。
「そんな穴をあけたのはフランスの大砲の弾丸《たま》ですよ。」と女は彼に言った。
 そして女はまた付けたした。
「門の上の方の釘の所にも穴がありましょう。あれはビスカイヤン銃の弾丸《たま》の穴です。ビスカイヤンは木を打ち通せなかったのです。」
「ここは何という所です。」と旅人は尋ねた。
「ウーゴモンです。」と百姓女は答えた。
 旅人は立ち上がった。二、三歩歩き出して、籬《まがき》の上から向こうをのぞきに行った。木立ちを透かして、かなた地平線に小高い丘を認め、またその丘の上に、遠くから見ると獅子《しし》の形をしたある物を認めた。
 彼はワーテルローの戦場にきていたのである。

     二 ウーゴモン

 ウーゴモンこそは不吉なる場所であった。それは障
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