。そうしてその千フランの紙幣は、いろいろな尾鰭《おひれ》をつけられて、ヴィーニュ・サン・マルセル街のお上さんたちの間に、びっくりした盛んな噂《うわさ》をまきちらした。
その後ある日のこと、ジャン・ヴァルジャンはチョッキ一枚になって、廊下で薪《まき》を鋸《のこぎり》ひきしていた。婆さんは室《へや》の中で片付けものをしていた。彼女はただ一人だった。コゼットは薪が鋸にひかるるのを見とれていた。婆さんは釘《くぎ》に掛かってるフロックを見て、しらべてみた。裏は元どおり縫いつけられていた。婆さんは注意深くそれに触《さわ》ってみた。そして裾と袖《そで》付けとの中に、紙の厚みが感ぜられるように思った。きっと千フラン紙幣がたくさんはいっていたのであろう。
婆さんはそのほか、ポケットの中に種々なものがはいってるのを認めた。前に見た針や鋏《はさみ》や糸ばかりでなく、大きな紙入れ、非常に大きいナイフ、それから怪しむべきことには、種々な色の多くの鬘《かつら》、フロックのどのポケットもみな、何か意外のでき事に対する用意の品がいっぱいはいってるようだった。
破屋の人たちは、かくて冬の終わり頃に達した。
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