彼女を遊ばせること、そこにほとんどジャン・ヴァルジャンの全生活があった。それからまた彼は、母親のことを語ってきかせ、神に祈りをさした。
コゼットは彼をお父さん[#「お父さん」に傍点]と呼んでいた。それより他の名を知らなかった。
コゼットが人形に着物をきせたりぬがしたりするのをながめ、また彼女が歌いさざめくのに耳を傾けて、彼は幾時間もじっとしていた。その時からして、人生は興味に満ちたもののように思われ、人間は善良で正しいもののように感ぜられて、もはや心のうちで何人《なにびと》をもとがめず、また子供に愛せられてる今となっては、ごく老年になるまで生き長らえるに及ばないという理由は何ら認められなかった。あたかも麗しい光明によって輝かされるがようにコゼットによって輝かされる未来を、彼は自分に見いだしていた。およそいかなる善人といえども、全く私心を有しない者はない。彼も時としては、コゼットが美しくはなるまいと考えて一種の満足を感じていた。
これは一個の私見にすぎないが、しかしわれわれは考うるところをすべてここに言ってしまいたい。すなわちコゼットを愛し初めた頃のジャン・ヴァルジャンの状態を見て
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