けていた。首府のはずれのどこかに、ある鉄道の始点が設けらるる時には、その場末の一区は死滅して一つの市街が生まれるものである。民衆の大中心地たる都市のまわりにおいては、それらの強大なる機械の響きに、石炭を食い火を吐き出すそれらの驚くべき文明の馬の息吹きに、生命の芽に満ちた土地は震え動いて口を開き、人間の古い住居をのみつくし、新しいものを吐き出すがように見える。古い家はくずれ落ち、新しい家がそびえてくる。
オルレアン鉄道の停車場がサルペートリエールの一角に侵入していらい、サン・ヴィクトルの濠《ほり》や植物園などに沿っている古い狭い街路は、駅馬車や辻馬車《つじばしゃ》や乗合い馬車などの群れが毎日三、四回激しく往来するために震え動き、いつしか両側の人家は左右にけ飛ばされてしまった。全く事実でありながら言うだにおかしな事がらが世にはあるものである。大都市においては太陽は南向きの人家を産み出し大きくなしてゆくということが真実であるごとくに、頻繁《ひんぱん》なる馬車の往来は街路を広くするということも確かな事実である。そしてそこには今や新生命の徴候が明らかに見えている。その田舎《いなか》ふうな古い一
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