であった。物の直線的な輪郭は、やみのうちに沈み込み姿を隠して、あたかも無限の一片のように思われてくる。そこを通る者は、無数の惨劇の言い伝えを思い出さないわけにはゆかなくなる。多くの犯罪が行なわれたその土地の寂寞《せきばく》さのうちには、何か恐ろしいものがこもっている。やみの中には係蹄《わな》が張られてるような感じがする。漠然《ばくぜん》たる形の物影がみな怪しいように思われる。並み木の間に見える長い四角な空隙《くうげき》が墓穴のように感ぜられる。昼間は醜く、夕方はものわびしいが、夜は陰惨となる。
夏の夕方などは、楡《にれ》の木の下に、雨に朽ちた腰掛けの上にすわってる婆さんなどがあちこちに見られた。それらの婆さんたちはよく人に施しを求めていた。
なおその一郭は、古く寂れてるというよりもむしろ廃《すた》れ切ったようなありさまではあったが、その当時からしだいに面目が変わりつつあった。既にその頃から、その変化を見んとする者は急がなければならなかった。日々に全体のうちのどこかが消滅しつつあった。今日はもとよりもう二十年も前から、オルレアン鉄道の発車場がその古い場末の横に設けられて、そこに働きか
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