ラマの中に見るようにユルバックがイヴリーの羊飼い女を雷鳴のうちに刺し殺したのであった。なお数歩進むと、サン・ジャック市門の所の頭を切られたいやな楡の木立ちの所に達する。あの博愛者らが断頭台を隠すに用いた所であり、死刑の前にたじろぎながら堂々とそれを廃することも、厳としてそれを継続することもあえてできなかった商人や市民などの階級の、陋劣《ろうれつ》不名誉なる刑場であった。
 今より三十七年前に、常に恐ろしいほとんど宿命的なそのサン・ジャックの広場を外にして、この陰うつなオピタル大通りのうちでの最も陰鬱《いんうつ》な所といえば、五十・五十二番地の破屋のある今日でもあまり人の好まぬその一|隅《ぐう》であった。
 町家はその後約二十五年も後にならなければそこには建て初められなかった。当時そこはきわめて陰惨な場所であった。前に述べたような惨劇を思い起こさせる上に、丸屋根の見えるサルペートリエール救済院とすぐ柵《さく》が近くにあるピセートル救済院との間にはさまってることが感ぜられた、すなわち女の狂人と男の狂人との間にあることが。目の届く限りただ、屠牛《とぎゅう》場や市の外壁や、所々に兵営や僧院に見
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