が立ってる牧場の所を通り、木片や鋸屑《のこぎりくず》や鉋屑《かんなくず》などが山となってその上には大きな犬がほえており、また木材がいっぱい並べてある庭の所を通り、しめきったまっ黒な小門がついていて春には花を開く苔《こけ》でおおわれてる長い低いこわれかけた壁の所を通り、貼札を禁ず[#「貼札を禁ず」に傍点]と大きい字が書いてある朽ちはてたきたない土蔵の壁の所を通ってゆくと、ついにヴィーニュ・サン・マルセル街の角《かど》まで行けるのであった。その辺はあまり人に知られてない所だった。そこにある一つの工場のそばには、両方の庭にはさまれて、当時一軒の破屋があった。それは外から見ると百姓家くらいの小ささだったが、実際は大会堂ほどの大きさをしていた。側面の切阿《きりづま》で通りに面していて、そのために外観の狭小をきたしているのだった。ほとんど家の全体は通りから隠れていた。ただ戸口と一つの窓とが見えるきりだった。
 その破屋は二階建てだった。
 それをよくながめる時、第一に不思議な点は、戸口は単なる破屋の戸口らしい粗末なものにすぎないのに、窓の方は、それがもし荒ら石の壁の中にあけられてるのでなく切り石の
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