ったに違いない。
ちょっと躊躇《ちゅうちょ》した後、彼は考えた。
「ええ、ぐずぐずしてるうちには逃げてしまう!」
そして彼はまっすぐに大急ぎで進んでいった。あたかも鷓鴣《しゃこ》の群れをかぎつけた狐《きつね》のように敏捷《びんしょう》に、ほとんど確信があるような様子で。
果して、池の所を通りすぎ、ベルヴュー並み木道の右手にある広い粗林を斜めに横ぎって、シェル修道院の昔の水道の覆《おお》いとなってほとんど丘を取り巻いてる芝生《しばふ》の小道まで達した時、彼は一つの帽子が藪《やぶ》の上から見えてるのを認めた。彼がいろんな憶測をなげかけた帽子で、あの男の帽子だった。藪は低かった。テナルディエは男とコゼットがそこにすわってるのを見て取った。コゼットの方は小さいので見えなかったが、人形の頭が見えていた。
テナルディエの見当はまちがわなかった。男は実際そこにすわってコゼットを少し休ましていたのである。テナルディエは藪をまわって、追いかけてきたその二人の目の前に突然現われた。
「ごめん下さい。」と彼は息を切らしながら言った。
「ここに旦那《だんな》の千五百フランを持って参りました。」
そう
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