んてばかなんでございましょう、そんな綽名《あだな》なんかをつけて。あの児は雲雀《ひばり》というよりか蝙蝠《こうもり》によけい似ていますのに。ねえ旦那、私どもは人様に慈善をお願いすることなんかいたしませんが、自分で慈善をするだけの力はございません。一向もうけはありませんのに、出すことばかり多いんで。営業税、消費税、戸の税、窓の税、付加税なんて! 政府から大変な金を取られますからねえ。それに私には自分の娘どもがいるんですから、他人の子供を育てなければならないというわけもありませんのです。」
男はつとめて平気を装って口を開いたが、その声はなお震えを帯びていた。
「ではその厄介者を連れていってあげましょうか。」
「だれを、コゼットでございますか。」
「そうです。」
上さんの赤い激しい顔は醜い喜びの表情に輝いた。
「まあ旦那《だんな》、御親切な旦那! あれを引き受けて、引き取って、連れてって、持ってって下さいまし、砂糖づけにして、松露煮にして、飲むなり食うなりして下さいまし。まあ恵みぶかい聖母様、天の神様、何てありがたいことでございましょう。」
「ではそうしましょう。」
「本当ですか、連れて
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