光でまぶしいほどに照らされて、その宿屋のガラス戸越しにイリュミネーションのように見えているのを、ぼんやり見て取っていたものと思われる。
コゼットは目を上げた。男が人形を持って自分の方へやって来るのを、太陽が近づいて来るのを見るようにしてながめた。これがお前さんのだ[#「これがお前さんのだ」に傍点]という異常な言葉を彼女は聞いた。彼女はその男をながめ、人形をながめ、それからそろそろと後退《あとしざ》りをして、テーブルの下の壁のすみに深く隠れてしまった。
彼女はもう泣きもしなければ、声も立てなかった。じっと息までもつめてるような様子だった。
テナルディエの上さんと、エポニーヌとアゼルマとは、みなそこに立ちすくんでしまった。酒を飲んでた連中までもその手を休めた。室《へや》の中は厳粛な沈黙に満たされた。
上さんは石のようになって黙ったまま、また推測をはじめた。「この爺《じい》さんはいったい何者だろう。貧乏人かしら、大金持ちかしら。きっとその両方かも知れない、と言えばまあ泥坊だが。」
亭主のテナルディエの顔には、意味ありげなしわが寄った。強い本能がその全獣力をもって現われる時に人間の顔
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