、コゼットの足下に横たわってる罪証物件を指で差し示した。
「で、あれがどうしたのです。」と男は言った。
「あの乞食娘《こじきむすめ》が、家の子供の人形に手をつけたんです。」と上さんは答えた。
「それでこんな騒ぎですか!」と男は言った。「あの児が人形で遊んだのがどうしたというんです。」
「あのきたない手で触《さわ》ったんです、」と上さんは言い続けた、「あの身震いが出るほどきたない手で。」
 するとコゼットは更に激しくすすり泣いた。
「静かにしないか!」と上さんは叫んだ。
 男はまっすぐに表の戸口の方へゆき、それを開いて出て行った。
 彼が出て行くと、上さんはその間に乗じて、テーブルの下のコゼットをひどくけりつけた。そのため娘は大声を上げた。
 戸はまた開かれた。素敵な人形を両手にかかえて男はそこに現われた。その人形のことは前に言っておいたとおりで、村の子供たちが朝からながめ入っていたものである。男は人形をコゼットの前にすえて言った。
「さあ、これがお前さんのだ。」
 彼はここにきて一時間以上にもなるが、その間何やら考えこみながらも、あの玩具屋《おもちゃや》の店がランプや蝋燭《ろうそく》の
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