の幻影を必ずや有するその全般の事実に立ち向かうだけの権利を有しない。一つの学説をうち立てるだけの実戦の才も戦術上の能力も有しない。われわれの見るところによれば、ただ一連の偶然事がワーテルローにおいて両将帥を支配したまでである。しかしてその神秘なる被告である運命に関しては、われわれはあの素朴なる判官である民衆と同様な判断をなすのみである。
四 A
ワーテルローの戦いの明らかな観念を得んと欲するならば、地上に横たえたAの大文字を想像すればそれで足りる。Aの左の足はニヴェルの道であり、右の足はジュナップの道であり、両方をつなぐ横棒はオーアンからブレーヌ・ラルーへの凹路《おうろ》である。Aの頂はモン・サン・ジャンであって、そこにウェリントンがいる。左下の端はウーゴモンで、そこにゼローム・ボナパルトとともにレイユがいる。右下の端はラ・ベル・アリアンスで、そこにナポレオンがいる。Aの横棒が右の足と交差している点の少し下がラ・エー・サントである。横棒の中央が、ちょうど勝敗の決した要点である。あの獅子《しし》の像が立てられたのはそこであって、それは期せずして近衛軍の最もりっぱなる勇武の
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