軍をトングル方面にしりぞけ、ウェリントンとブリューヘルとを二個の破片となし、モン・サン・ジャンを奪い、ブラッセルを占領し、かくてドイツ軍をライン河に圧迫し、イギリス軍を海中に投ぜんとしたのである。ナポレオンにとっては、すべてそれらのことがこの一戦のうちにあった。その後のことは明白であろう。
いうまでもなくわれわれはここにワーテルローの歴史を書かんとするのではない。われわれの語らんとする物語の基礎たるべき場面の一つがこの戦争と関係を有するのではあるが、しかしその歴史がわれわれの題目ではない。その上既にその歴史はでき上がっている、ナポレオンによって一方の見地からと、一群の歴史の大家(ワルター・スコット、ラマルティーヌ、ヴォーラベル、シャラス、キネー、ティエール)によって他の見地からと、堂々と完成されている。われわれはただそれらの歴史家をして争論するままにさしておこう。われわれはただ遠方よりの見物人であり、その平原の一旅人であり、人間の肉をもってこね返されたるその土地の上に身をかがむる探究者であり、しかも皮相をもって事実と誤る探究者に過ぎないかも知れない。われわれは学問の名においても、多く
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