ことはことわるわけにいきませんからな。」
「すぐに金を払って頂きましょう。」と上さんはいつもの簡単確実なやり方で言った。
「ではその靴下を買いますよ。」と男は答えた。そしてポケットから五フランの貨幣を取り出してテーブルの上に置きながら、つけ加えて言った。「代を払いますよ。」
それから彼はコゼットの方へ向いた。
「もうお前さんの仕事は私のものだ。勝手にお遊びよ。」
馬方は五フランの貨幣に驚いて、杯をすててやって行った。
「いやほんとだ!」と彼はその貨幣をしらべながら叫んだ。「本物の大きいやつだ、贋造《にせ》じゃないや。」
テナルディエはそこに近づいていって、黙ってその金をポケットに納めた。
上さんは一言もなかった。彼女は脣《くちびる》をかんで、顔には憎悪《ぞうお》の表情を浮べた。
でもコゼットは震えていた。そして思いきって尋ねてみた。
「お上さん、本当ですか。遊んでもいいんですか。」
「お遊び!」と上さんは恐ろしい声で言った。
「ありがとうございます、お上さん。」とコゼットは言った。
そして口ではテナルディエの上さんに礼を言いながら、彼女の小さな心は旅客に礼を言っていた。
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