傍点]という言葉は狭い意味に使ったのであって、全般にわたってのことではない。
この一八二三年には、テナルディエは督促の激しい千五百フランばかりの債務を負っていて、それに心を悩ましていた。
いかに運命に酷遇されようともテナルディエは、最もよく、最も深く、また最も近代的に、ある一事を了解していた。一事というのはすなわち、野蛮人のうちでは一つの徳義であり、文明人のうちでは一つの商品である、あの歓待ということであった。それからまた彼は巧みな密猟者で、小銃の上手なことは評判になっていた。彼は一種の冷ややかな静かな笑い方を持っていたが、その笑いがまた特に危険なものであった。
宿屋の主人としての彼の意見は、時として稲妻のように口からほとばしり出た。彼は専門的な金言を持っていて、それを女房の頭にたたきこんでいた。ある日彼は低い声で激しく彼女に言った。「宿屋の主人たる者がなすべきことは、つぎのようなことだ。やってきた者にはだれにでも、食物と休息と燈火《あかり》と火ときたない毛布と女中と蚤《のみ》と世辞笑いとを売りつけることだ。通りがかりの者を引きとどめ、小さい財布ならそれをはたかせ、大きい財布なら
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