かなければならない一事がある。すなわち広場の上に並んだ見世物のうちに、一つの動物小屋があった。その中で、身にはぼろをつけてどこからやってきたともわからないきたない道化者らが、この一八二三年にモンフェルメイュの百姓どもに、あの恐ろしいブラジルの禿鷹《はげたか》の標本を一つ見せていた。それは王室博物館にも一八四五年まではなかったもので、目には三色の記章がついてるものだった。博物学者はその鳥をカラカラ・ポリポルスと呼んでいると記憶する。それはアピシデの部門にはいるもので、禿鷹類に属するものである。村に引退しているボナパルト派の人のいい老兵士らが数人、その鳥を熱心にながめていた。その三色の記章の目は、この動物小屋のために、ありがたい神様の御手で特別になされた他に見られない図であると、道化者どもは説き立てていた。
 そのクリスマスの晩に、テナルディエ飲食店の天井の低い広間の中では、馬方《うまかた》や行商人など数人の男が、四、五の燭台《しょくだい》のまわりに陣取って酒を飲んでいた。その広間はどこの居酒屋《いざかや》にも見られるようなもので、食卓、錫《すず》の瓶《かめ》、酒壜《さけびん》、それから酒
前へ 次へ
全571ページ中164ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング