う名前である。
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   第三編 死者への約束の履行



     一 モンフェルメイュの飲料水問題

 モンフェルメイュは、リヴリーとシェルとの間に位し、ウールクとマルヌ両河をへだてている高台の南端にある。今日ではかなり大きな町で、一年中|白堊《はくあ》の別荘で飾られ、日曜日には花やかな市人で飾られるが、一八二三年には、まだ今日ほど多くの白塗りの家もなく、また満足げな市人もいなかった。それはただ森の中の一村落にすぎなかった。ただそこここに二三の近世ふうな別墅《べっしょ》などがあって、その堂々たる構えや、よじれた鉄欄のついてる露台や、閉ざされたまっ白な板戸の上に色ガラスの種々な緑色が浮いて見える長い窓などで、それと見分けられていた。それでもやはりモンフェルメイュは一つの村落にすぎなかった。引退した呉服商や別荘暮らしの人たちなども、まだこの地を見い出していなかったのである。それは平和なうるわしい場所であって、いずれへの往還にも当たっていなかった。豊富な気やすい田舎生活《いなかせいかつ》を安価で送ることができていた。ただ土地が高いので水が不自由であ
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