がき》で隠されている。フランス兵はそこにきて、ただ生籬ばかりだと思ってそれを乗り越すと、その先には障害物であり埋伏所である壁があり、その後ろにはイギリスの近衛兵がおり、一時に発火する三十八の銃眼があり、霰弾《さんだん》と銃弾とのあらしがあった。そしてソアイの旅団はそこで粉砕された。かくてワーテルローの本舞台は初まったのである。
けれども果樹園は占領された。はしごがなかったので、フランス軍は爪でよじ登った。木立ちの中で白兵戦が演ぜられた。草はすべて血に染まった。七百人のナッソーの一隊はそこで撃滅された。ケレルマンの砲兵二個中隊が壁に砲火を浴びせたので、その外部は砲弾のためにさんざんになっている。
いまやこの果樹園もやはり、五月の時を忘れないでいる。きんぽうげやひな菊も咲き、草は高く伸び、農馬は草を食い、洗たく物をかわかす毛繩は木立ちのすき間に張られて、通る人々の頭をかがめさせる。その荒地を歩けば、時々もぐらの穴に足を踏み込む。草の中に、根こぎにされて横たわりながら青々と芽を出してる一本の木が見らるる。ブラックマン少佐がそれに寄りかかって息を引き取った。その隣の大きな木の下では、ナント
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