に用のない多くの人がいっぱいになっていた。
オリオン号は既に長い前から損《いた》んでいた。方々への航海中に、貝殻の厚い層が喫水部《きっすいぶ》に付着して、速力の半ばを減じていた。で前年はドックにはいってその貝殻を除かれ、そしてまた海に出て行ったのである。しかしその掃除のために喫水部の釘が損じていた。バレアール島の沖では、船腹がゆるんで穴が開いた、そして当時船体の内部は鉄板でおおわれていなかったので、水が漏り初めた。そこへ激しい彼岸嵐に襲われて、左舷《さげん》の船嘴《せんし》と一舷窓とがこわれ、前檣《ぜんしょう》の索棒が損《いた》んだ。そしてそれらの損所のためにまたツーロン港にはいってきたのである。
オリオン号は造船|工廠《こうしょう》の近くに停泊していた。そしてなお艤装《ぎそう》したまま修繕されていた。船体は右舷では少しも損んでいなかった。しかしいつもやられるとおりに、張り板はそこここはがされていて、船内に空気を通す用に供されていた。
さてある日の朝、オリオン号をながめていた群集は一事変を目撃した。
船員らはちょうど帆を張っていた。すると、右舷の大三角帆の上端をとらえる役目の水
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