推測といくらか符合する点を有しているようでもある。
 モンフェルメイュの地方には、ごく古くからのある迷信があった。パリー近くのその地方にかかる一般に信じられた迷信があることは、ちょうどシベリアに伽羅《きゃら》の名木があるように意外なことで、そのためにいっそう珍しがられ尊重されていた。人間はすべて珍しいものを尊重するものである。ところでモンフェルメイュの迷信というのは次のようなものであった。大昔から悪魔は宝を隠すために森を選んだということが人々に信じられている。夕暮れのころ、森の奥の方で、ある黒い男に出会うことがよくあるものだと、女たちは言っている。その男は、荷車引きか木こりのような顔つきをして、木靴をはき、麻の上衣とズボンとをつけているが、普通の帽子のかわりに頭の上に二本の大きな角があるので、それと見わけられるのだそうである。なるほどそういうものがあればよく見わけられるはずである。その男は普通はいつも穴を掘っている。そして彼に出会った場合には、三つの方法がある。第一は、彼に近寄って行って話しかけることである。すると実は一人の百姓にすぎないことがわかる。姿が黒く見えたのは夕暮れのせいであ
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