言った。
その一言でフォーシュルヴァンはすっかり現実に呼び戻された。事情は切迫していた。二人の者は我に返ってからも、なぜともわからず心が乱れていた。そして彼らのうちには、その陰惨な場所のためにある言い知れぬ感情が起こっていた。
「早くここを出ましょう。」とフォーシュルヴァンは叫んだ。
彼はポケットの中をさぐって、用意していた壜《びん》を取り出した。
「だがまあ一口おやりなさい。」と彼は言った。
外気に次いでその壜《びん》がすべてをよくなした。ジャン・ヴァルジャンは火酒を一口のんで、すっかり元気になった。
彼は棺から出た。そしてフォーシュルヴァンに手伝って再びその蓋《ふた》を打ちつけた。
二、三分後には、二人とも墓穴の外に出ていた。
それにまたフォーシュルヴァンも落ち着いていた。彼はゆっくり構えた。墓地はしまっている。墓掘り人グリビエが来る気づかいはない。その「新参者」は家にいて札をさがし回ってる。そして札はフォーシュルヴァンのポケットの中にあるから、家で見つかるわけはない。札がなければ墓地の中に戻って来ることはできないのだ。
フォーシュルヴァンは※[#「金+産の旧字体」、第3水準1−93−37]《くわ》を取り、ジャン・ヴァルジャンは鶴嘴《つるはし》を取り、二人して空棺を埋めた。
墓穴がいっぱいになった時、フォーシュルヴァンはジャン・ヴァルジャンに言った。
「さあ行きましょう。私は※[#「金+産の旧字体」、第3水準1−93−37]を持ちますから、あなたは鶴嘴をお持ちなさい。」
日は暮れていた。
ジャン・ヴァルジャンは動き回ったり歩いたりするのに少し苦しかった。棺の中で彼は身体を硬《こわ》ばらし、いくらか死体のようになっていた。その四枚の板の中で、死の関節不随にとらわれていた。いわば墓の中から脱け出さなければならなかった。
「あなたはしびれていなさる。」とフォーシュルヴァンは言った。「それに私まで跛者ときています。そうでなけりゃもっと早く歩けますがな。」
「なあに、」とジャン・ヴァルジャンは答えた、「少しゆけば私の足はよくなるよ。」
彼らは棺車の通った道から立ち去っていった。しまった鉄門と門番の小屋との前まできた時、墓掘り人の札を手に持っていたフォーシュルヴァンは、その札を箱の中に投げ込んだ。すると門番は綱を引き、門が開き、二人は外に出た。
「すっ
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