と呼ぶ。革命が過ぎ去る時に人は認むる、人類は酷遇されたと、しかも人類は進歩をしたと。」
 民約議会員は、司教の内心の防御障壁をことごとくそれからそれへと打ち破ったことを疑わなかった。しかれどもなおそこには一つ残っていた。そしてビヤンヴニュ閣下の最後の抵抗手段たるその障壁から、次の言葉が出た。そのうちにはほとんど初めのとおりの辛辣《しんらつ》さがまた現われていた。
「進歩なるものは神を信じてるはずです。善は不信の僕《しもべ》を持つわけはありません。無神論者である人は、人類の悪い指導者です。」
 人民の代表者たる老人は答えをしなかった。彼は身を震わした。彼は空をながめた、そしてしだいに目に涙がわき出てきた。涙はまぶたにあふれて、蒼白《そうはく》のほほに伝わって流れた。彼は空の深みに目を定めたまま、自分自らにささやくがように声低くほとんどどもりながら言った。
「おお汝《なんじ》! おお理想! 汝のみひとり存在する!」
 司教は名状すべからざる一種の衝動を感じた。
 ちょっと沈黙の後、老人は空の方に指をあげてそして言った。
「無限は存在する。無限は彼処《かしこ》にある。もしも無限にその自我がな
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