卓を見つけました。それを金色に塗りかえるには六リーヴル金貨二枚くらいはかかるでしょう。けれどそれは貧しい人たちに施した方がよろしいのです。その上その小卓はごく体裁が悪くて、マホガニーの円卓の方が私は好ましいのです。
私はいつも仕合わせでいます。兄はきわめて親切なのです。自分の持ってるものは残らず困窮な者や病人などに与えてしまいます。大変困まることもあります。この地方は冬がごく厳《きび》しくて、貧乏[#「貧乏」は底本では「貧之」]な人たちのために何かしてやらなければなりません。私どもはようやくに薪《まき》をたいたり燈火《あかり》をともしたりしています。でもそれは非常に楽しいことなのです。
兄は自己一流のやりかたを持っています。話をする時には、司教たるものはかくしなければならないというようなことを申します。家の戸口は決して締りをいたしません。だれでもはいれます、そしてすぐに兄の所へ行けるのです。兄は何物も恐れません、夜ですら。自分でよく言いますように、それが兄の勇気なのです。
兄は私やマグロアールが兄の身を心配するのを好みません。どんな危険でも冒しまして、そして私たちがその危険を案じ
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